日本はいま“超高齢化社会”といわれています。認知症の患者数は年々増えており、国の調査によると認知症有病率は12.3%で、高齢者の約8人に1人という割合です。
数字だけを見ても、決して他人事ではないと感じる方も多いのではないでしょうか。親が高齢になり判断能力が不十分になった際、利用を考えたいのが「成年後見制度」です。
この記事では成年後見制度の概要と、利用する際の注意点を解説します。
■成年後見制度の概要
「成年後見制度」は、判断能力が低下した本人に代わり、成年後見人が財産の管理や法的な行為ができる制度です。この制度を利用するためには、家庭裁判所に申立てを行います。成年後見制度にはいくつかのタイプがありますが、本人の意思を尊重し、生活や財産を法的に守ることを目的としています。
■成年後見制度の注意点
成年後見制度は高齢者や健康に不安のある方、またはその家族にとってはとても有益な制度です。しかし、注意したい点もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
〇財産の柔軟な運用・活用ができない
成年後見制度は、あくまでも被後見人の財産を保護することが目的です。そのため、老後資金を増やそうとしても元本の保証されない投資や資産運用に使うことは認められません。相続税対策として用いられる生前贈与や不動産の購入も、被後見人の財産を減らす行為と考えられ、基本的には行うことができません。高額な物品の購入や財産の処分を行う場合は、家庭裁判所へ連絡をする必要があります。自宅の売却をする際は、家庭裁判所に申立てを行い、許可を得なくてはなりません。
〇後見人の負担が大きい
後見人に選任されると、被後見人の財産を管理することになります。預貯金の口座を確認し、引き落としが正常に行われている、不正な使用はないかなどをチェックします。
利用している医療施設への支払いや税金の納付、日常的な生活品の購入なども収支記録が必要となるため、煩わしく感じることもあるでしょう。
また、被後見人の身上監護も後見人の大切な役割です。本人の状態に合った介護サービスや医療施設を検討し、必要な手続きを行うことが重要です。
一年に一回程度、家庭裁判所への定期報告も必要なため、忙しい方では時間の確保が難しいかもしれません。
高齢になり、認知症などの理由から判断能力が低下することは、誰にでも起こり得ることです。成年後見人制度は、そういった状況下ではとても有効な手段の一つです。
しかし、注意が必要な部分もあります。後見人は本人が亡くなるまで続くことがほとんどのため、申立てを行う際は、慎重に検討しましょう。
本人だけでなく、家族や周りの方が安心できる最良の方法が見つかるといいですね。