成年後見人による非居住用不動産の売却

不動産の売却を行う際、所有者が認知症などの要因で判断能力が十分でない場合は、一般的に成年後見人制度を活用することで売買契約を結ぶことができます。子どもや兄弟だからといって、勝手に売却することはできません。売却手続きの方法は、所有者本人の居住用不動産か非居住用不動産かによって異なります。今回は非居住用不動産の売却について解説します。

■非居住用不動産とは

非居住用不動産は、所有する賃貸アパートや投資用のマンションなど、所有者本人が住んでいない不動産を指します。居住用か非居住用かの判断が難しい場合は、弁護士などの専門家や不動産会社に相談してみるのも良いでしょう。

■居住用不動産を売却するには

成年後見人が非居住用不動産を売却する場合、居住用不動産のときとは違い、家庭裁判所の許可を得る必要はありません。そのため売却する流れは、通常の不動産売却とほとんど変わらないといえるでしょう。ただし、後見人が自由に売却していいということではなく、売却しなければならない正当な理由が必要です。売却が認められる主な理由は、本人の生活費や医療費、施設の入居費用などの確保、といった本人のために必要と思われるものです。後見人や他の親族のためと思われる売却は、正当な理由とは認められないので気をつけましょう。売却価格についても、相場からかけ離れた価格での売却は、本人の不利益になると判断されることもあるため注意が必要です。正当な理由がない、売却の必要がない、本人ためにならない、と思われる状況で不動産を売却すると、売買契約が無効になったり、家庭裁判所から身上配慮義務に反しているとみなされる可能性があります。身上配慮義務とは、成年後見人が財産管理や契約の代行などさまざまな業務を行うにあたり、本人の意思を尊重し、心身の状態や生活状況に配慮する義務のことをいいます。この観点から、後見人の行うことは、本人の生活や心身を守るために必要かどうかが判断され、後見人として適切でないようであれば解任されることもあります。不動産の売却や関連するさまざまな契約においても、本人に不利とならないよう、成年後見人は責任を持たなければなりません。

成年後見人による不動産売却の方法は、居住用か非居住用かによって異なるため、まずはその判断が重要になります。非居住用不動産では家庭裁判所の許可は不要ですが、売却が必要と思われる正当な理由がなければなりません。また所有者本人の利益を害するような契約も、認められないことが多々あります。後見人による不動産の売却に不安がある場合は、事前に専門家や家庭裁判所に相談することをおすすめします。