「成年後見人制度」をご存知ですか。なんとなく聞いたことはあるけど、詳しいことは分からないという方も多いのではないでしょうか。成年後見人制度は2000(平成12)年に創設され、2016年には利用促進の法律も成立していますが、認知度はあまり高くないといえるかもしれません。不動産の売却や関連するさまざまな契約に関わることも多いので、今回は成年後見人制度の概要について解説します。ぜひ参考にしてください。
■成年後見人制度とは?
超高齢化社会といわれて久しい日本では、認知症の患者数も増加しています。内閣府が以前に行った調査によると、2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症を発症すると予測されています。介護や福祉サービスの費用を捻出するため、所有する不動産の売却を検討する方もいらっしゃるでしょう。しかし、子どもや兄弟であっても、所有者の承諾なしに不動産を売却することはできません。そこで、成年後見人制度の活用が重要になるのです。成年後見人制度とは、認知症や知的障害などによって判断能力が不十分な方の代わりに、代理人(後見人)が財産管理やさまざまな契約代行などを行える制度です。判断能力の低下した方が不利益な契約や詐欺などのトラブルに巻き込まれないように、法的に保護しサポートすることを目的としています。後見人を選定することにより、不動産の売却も行えるようになります。
■成年後見人制度の種類
成年後見人制度には、大きく分けて「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。それぞれの概要を見ていきましょう。
・任意後見制度
任意後見制度は、まだ本人の判断能力が十分あるうちに、将来に備えて任意後見人を選定しておく制度です。この制度を利用するには、公証人が作成する公正証書において契約を結ぶ必要があり、財産管理や契約の代行など依頼したい内容を、本人の意思のもと決めることができます。
・法定後見制度
すでに判断能力が十分ではない場合、子どもや親族などが家庭裁判所に申し立てをし、家庭裁判所により後見人が選ばれる制度です。法定後見制度は、判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3種類に分けられており、症状の重い方から「後見」「保佐」「補助」の順となります。任意後見制度と違い、後見の内容はあらかじめ決められていて、3種類それぞれに与えられている権限も異なります。
認知症などの症状は一人ひとり異なり、判断能力の状態もそれぞれ異なります。成年後見人制度にはいくつかの種類があるため、状況に合った制度を活用しましょう。成年後見人制度は、判断能力に不安がある本人だけでなく、その方を支える周りの方々へのサポートでもあるのです。