高齢化が進む中、高齢者における認知症患者の発生率が年々高まっています。2018年には高齢者の7人に1人が認知症と診断されました。2025年には5人に1人になると予測されています。
認知症になってしまうと的確な判断が難しくなりますし、その家族の負担も増えることにもなります。そこで、認知症対策として家族信託を利用する人が増えています。
家族信託は、大切な財産の管理・処分を信頼できる家族に任せることができますので、遺言書よりも幅広い対応が可能です。
この家族信託にはそれぞれメリット・デメリットがありますが、それをを把握することで、家族信託と他の財産管理・処分方法と具体的な比較ができます。自分に合った方法を選択するためにも、まず家族信託の主なメリット・デメリットを確認していきましょう。
融通性が高い家族信託
家族信託のメリットは4点です。
①認知症によって発生するリスクを回避
家族信託では、被相続人が認知症などで判断能力が低下しても、スムーズに財産管理や処分が可能です。認知症に伴って資産が凍結されるというケースも少なくありませんが、こういったリスク回避ができます。
②遺言書よりも広い対応の幅
家族信託であれば、その信託の仕組みの中で財産管理が可能になります。遺産を受け取る人が認知症になっていたとしても、家族信託の仕組みの中で、相続人の管理等をサポートができるというわけです。
③成年後見制度よりも柔軟な財産管理が可能
家庭裁判所への定期的な報告や報酬負担、相続税対策がしにくい成年後見制度と比べて、家族信託は本人に判断能力がある段階から財産管理を任せることができますので、柔軟な財産管理が可能です。
④財産承継の順位づけでトラブルを防ぐ
2次相続以降の財産継承先を指定できることも家族信託のメリットのひとつです。被相続人が希望する順番で財産承継者を決めることが可能になることで、財産争いのリスクを回避できます。
人的要因で課題が残る家族信託
家族信託にはメリットがある一方で、デメリットもあります。主なデメリットは3点です。
①受託者選定で揉めごとに発展
家族信託は事前に受託者を決める必要があります。その選定に揉める可能性が出てきます。信頼できる家族・親族がいる場合は問題ありませんが、そうでない場合は受託者を決めること自体に抵抗が出てトラブルを招きかねません。
②まだ少ない専門家
家族信託は誰にでも相談してもよいという訳ではありません。中途半端な知識しか持たない人に相談しても、結果的に誤った認識を持つことになり、後悔してしまいます。ですが、家族信託の知識と経験が豊富な専門家はまだ少ないのが実情です。
③期待できない節税効果
家族信託は財産を管理・処分する方法のひとつですが、相続税の節税を目的とするものではありません。家族信託を利用しても大幅に税金が減らないことを理解しておきましょう。
以上、家族信託のメリット・デメリットを紹介させていただきました。
一言で家族信託といっても、一長一短があるのですね。
これらの特徴をよく理解して、あなたの資産管理に生かしましょう。