成年後見人による居住用不動産の売却(後編)

このコラムは後編となります。前編はこちら

前述のように、成年後見人が住居用不動産の売却を行うには、必ず家庭裁判所の許可を得なければならず、許可を得ずに行った処分は無効となります。
その為、成年後見人が住居用不動産の売却をするには、裁判所へその趣旨と理由を示して住居用不動産処分の申立てをしなければなりません。

申立ての際には、本人の生活費、医療費等や老人ホームの入居費用捻出の為など、具体的な理由を示し、あるいは、本人が住居用不動産へ戻る予定は無く、所有していることで維持費用が発生しているなどの事情を示して、裁判所の判断を仰ぎます。

また、売却の代金が相当なものであることが裁判所の判断の一つの基準となりますので、
申立てと同時に売却金額を示す必要があります。そのため、成年後見人は前もって買主と売買契約を結び、売却予定金額を出しておかなければなりません。この場合の契約は、裁判所の許可を得ることを停止条件とした停止条件つき売買契約を結ぶことが多いようです。停止条件付きの契約とは、条件が成就するまでは契約は有効なものとならず、条件の成就を要件として契約の効力が発生する契約のことを指します。

家庭裁判所は申立てを受け、本人の財産状況や提示された売却金額などをもとに、売却の必要性、相当性を判断し、総合的な審判を行います。
裁判所が判断するために、売却する不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)、契約書の写し、売却する不動産価格の妥当性についての査定書や土地課税台帳登録事項証明、固定資産評価証明書などの補足資料、推定相続人の同意書も合わせて提出します。

必要性については、売却の目的や事情、財産状況を考慮して、売却を必要とするかどうかが問題とされます。また財産状況と合わせて、住居用不動産に対する本人の看護状況や、本人の意向の確認も重要な要素とされています。

相当性については、売却金額が相当な金額となっているかだけではなく、売却の代金が本人のために使われるのかといった使途、管理方法が相当な物であるかが問題とされます。売却代金は、親族などの生活のために使うことはできず、本人のために使われなければありません。
家庭裁判所から売却許可決定がなされると、停止条件付きだった売買契約は条件成就となり、成年後見人による住居用不動産の売却が成立します。その後は、契約の通りに売買代金の受領と不動産の引渡しを行い、移転登記が完了すれば、成年後見人による住居用不動産の売却の手続きは完了となります。