売買などの契約が成立する為には、物を売りたいという意思表示と、買いたいという意思表示が合致することが必要です。この当事者間の合意が形成されることによって、その意思表示通りの法律効果(権利と義務)が発生します。このように、法律効果を発生させるためには、有効な意思表示がなされることが必要な要件となっています。
また、契約などの法律行為を、単独で有効に行う事の出来る能力のことを行為能力といいます。法律行為を行うにあたり、認知症・知的障害・精神障害など精神上の障害により判断能力が十分でない方もいますので、そのような方を保護し、支援する制度として「成年後見制度」があります。
成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度に分かれます。
法定後見制度には、判断能力の程度などに応じて「後見」「補佐」「補助」の三つがあります。それらの保護、支援を受ける人を成年被後見人、被補佐人、被補助人と呼びます。応じて、保護する者を成年後見人、保佐人、補助人と呼びます。
成年被後見人とは、精神上の障害によって事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、一定の者から請求し、家庭裁判所により後見開始の審判を受けた者のことを差します。単に事理弁識能力を欠く常況にあるだけではなく、裁判所の審判を受けていなければ、被後見人とはなりません。保護者として任命された成年後見人は、本人の利益の為に成年被後見人の法律行為を代理し、あるいは必要に応じて取消権を行使します。
被保佐人とは、精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分であるもので、一定の者から請求し、家庭裁判所により補佐開始の審判を受けた者のことを指します。保佐人は重要な財産行為について同意権や取消権を持ちます。また、本人が選択した特定の法律行為についても、代理権や同意権、取消権を有します。
被補助人とは、精神上の障害により事理弁識能力が不十分なもので、一定の者から請求し、家庭裁判所により補助開始の審判を受けた者のことを指します。補助人は、本人の指定した特定の法律行為の代理権、同意権、取消権を有します。
一方、任意後見制度では、本人が十分な判断能力があるうちに、判断能力が不十分な状態となった場合に備えて、あらかじめ代理人(任意後見人)を選び、代理権の内容、範囲を定めて、代理権を与える契約を結んでおきます。この任意後見契約は公正証書をもって結んでおく必要があります。本人の判断能力が不十分な状態となった後、任意後見人が契約に基づき家庭裁判所へ申立て、選任された任意後見監督人の監督のもと、本人を代理して法律行為を行うことによって、本人の意志に沿った保護、支援を行うことが出来ます。